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Interview with KOKA Fukushima

福島光加インタビュー 第3弾 2009.12  

Q. 今年もあと少しになりました。振り返ってどうでしたか?
A. ゆっくりした年でしたね。大事なデモンストレーションは いくつかありましたが 海外出張がなかったし 国内の出張が前の年に比べれば ほんのすこしと。周りと自分のことを見なおす年だったかもしれませんね。

Q. でも、プライベートな花のライブは開催したのですね。
A. はい、夏の巻を 会場を変え開催しました。今回も生徒さんのベテランの中から 何人かデモをお願いしました。前回とは会場を変えたので 照明も考えることができ その上ピアノも素晴しいものが会場にあり 作品をいけるバックで プロのジャズピアニストにひいてもらいました。

Q. ブログでもそのときの写真がありましたね。プライベートでは何か変化が在りましたか?
A. はい ありました。

Q. それは聞き捨てならないこと! な、なんですか!?
A. 体重が2キロ半減りました。

Q. あ、そういうこと……。
A. 時間ができたので 皇居の周りをウオーキングをはじめたことも 関係あると思います。
 それと 去年のヨーロッパや カナダの仕事は さすがに 緊張していたのでしょうね。
 次の日 仕事がとても大変で どのタイミングで食事ができるか……とりあえず食べておこう、スタミナつけなくちゃ。と無意識のうちにそういう気になっていたのでしょう。食事にご招待いただいても せっかくのものを残しては 相手に申し訳ないという頭もあるのでしょう。いつも仕事で海外に行くと 太ります。

Q. なーるほど。
A. 仕事がすくないときほど 大好きなあんみつとか甘いものは お財布と健康の面を考え 極力カット。

Q. 世のなかはいろいろと大変な情況ですが、大好きなあんみつまで考えてからいただくとなると、つまらなくなりませんか?
A. なんのなんの。それより、今年は 人の好意をしみじみと感じた年でした。人間て素晴 らしいと。

Q. ほう。それは?
A. 8月にフィンランドから来たいけばなの生徒が 9月はスイスに行くという。何でも フライトアテンダントのスイス人の仲間が 還暦を迎え 仕事を引退する。で、この日を迎えられるのは なんといっても周りで助けてくれた仲間や 支えてくれた友人のおかげといって スイスの山の上の一軒家を彼女が借りて 仲間たちに感謝をあらわすため この特別なお誕生日にみんなを招待するというのです。
 この話をしたフィンランド人のこの生徒は もう20年近く 東京に来るたび私のいけばなのクラスや 本部のクラスに 通い 今ではヘルシンキでいけばなの先生をしています。元パイロットのご主人と このチューリッヒの山の上に この彼女をお祝いしに行く計画という。
 私は思わず(こんなかたちの還暦祝いって なんて素敵! いい話ねえ。そのかたにあってみたいわ!日本にはこないの?)
 というと あ そこは50人泊れるから 先生が来たら? 彼女にきいてみるわ。 私の大切な先生なら だいじょうぶ、彼女はどうぞ、というわ という。
 で 一ヵ月後 私はその山の上の 築80年 木造3階建ての小屋にいました。

Q. 思いきりましたね!
A. 私って 飛行機代どうやってひねりだすか 仕事どうするか だれかにどんなに迷惑かけるか――ってことも 一瞬、飛んでしまうことが この年になるまで 何回かあったの。 この人に今回会えなければ  私 一生後悔するのではないか と直感的に思ったわけ。

Q. どうでした?
A. 場所は むかし貧しい子供たちに 夏休みを楽しく過ごしてもらうため作られた小屋なので とても質素でしたよ。毛布は軍のお下がりでした。トイレもシャワーも共同だけれど さすがスイス。清潔でしたよ。壁の古い板にもいたずら書きもない。いらしていた皆さん航空会社関係だから なにをやっても手早い。還暦の当人のウルシュラは、食事も準備 暖炉のための まきわりなど 友人たちとさっさとやっていましたね。朝 パジャマにセーターをひっかけて コーヒーも入れてくださった。ここは 環境保護のため 30分に一本の 村営のケーブルカーしか使ってはいけないの。山の上に行く一回だけ 食料を上げるため車を使っていい。ウルシュラもそのために 15年の古いキャンピングカーを借りたとか。

Q. ほう。
A. 還暦のお祝いというと 祝ってもらうことしか頭にないのではなくて 彼女の 人に対する感謝の気持ちのあらわし方が素晴しいと思う。初対面の私が だからどうしても会いたかったというと 大歓迎してくださった。
 私が着いたのは お祝いのその日ではなかったけれど 後片付けを手伝ったり たくさんのワインの空き瓶を車に積み込みながら いかに盛り上がったかが十分想像できました。数百メートル隣に住んでいて 猟をしている家族と話したり 他の国のパーサーや パイロットの人たちも口々に彼女の人柄を賞賛していて 忘れられない二日間でした。赤十字を創立したのは この国の アンリ・デュナンだったと夜 遠い空の澄んだきらきらの星を見ながら思い出しました。人間て大宇宙の中で 小さい存在なんだ、とも思いました。ヨーロッパに仕事なしで行くのは 本当に久しぶりでした。

Q. いい経験でしたね。
A. 私もこんなご時勢だからこそ 感謝の気持ちをもつこと、それを表すこと。あらためて 大事にしなければと思いました。こんな経験ができたのも いけばなをしてたから、ともいえるでしょう。
 来年も その感謝の気持ちを忘れずに 過ごしていきたいと思います。

 

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