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南米いけばなの旅

花の旅 2

  オーストラリア、ニュージーランド、そしてフィリピンと一ヶ月以上にもわたる旅が、このデモンストレーションで終わりとなった。
 N君と二人、帰りの車の中で口数も少なくマニラの町をながめる。緊張感はまだとけはじめていない。頭の中はまだ混沌としている。車はやがて大きな公園にさしかかった。
「この公園には、ローマ法王も昨年いらっしゃいました。そのとき大集会があった所です」
 大使館のY夫人が説明してくださる。
「ここはカトリックの方が多いから、法王の歓迎は熱狂的だったでしょうね。どんなにか大変でしたでしょう?」
「ええ、もちろん法王の車は防弾ガラスで、警備もとても厳重だったようです」
 日本では実感しにくいが、いうまでもなくローマ法王の存在は巨大だ。その警備ということになれば、世界のどこの国も特別な神経をつかうだろう。しかしいま、この国ではそれだけの理由で警備が強化されているのではない。翌年にせまった大統領選挙にむけて、この国は極度に不安定な状況にあるのだ。長い政権の座にあるマルコス現大統領、そして暗殺されたベニグノ・アキノ氏の夫人、コラソン・アキノ女史。事実上、この二人が大統領の座をかけての選挙戦となる。マルコス氏のいわば独裁政権に対する民衆の不満はどうにもおさえきれないところまできていたらしかった。
 
 マニラの上層階級の住人たちのあいだではヴィレッジと呼ぶ、入口で車も人もチェックされ、限られた人しか出入りできないという一角が各所につくられているのだが、そのヴィレッジの中ででも安心することはできないと、手伝ってくれたTさんが言う。きのう彼女のとなりのヴィレッジでは強盗があり、何人かが重傷を負ったという。「犯罪多発都市」というありがたくない呼び方がされるようだが、それにしても、この数カ月の犯罪の多さは異常だという。そんななか、コラソン・アキノ女史の優勢が伝えられていた。

 
― 解説 ―
 
花市場 また日用品を売っているマーケット 庶民の台所のような市場は すり たかり ひったくり などというのがやってきます、一目で旅行者などとわからないように といわれますが 彼らにはわかってしまいます。大事なのは警戒しているというオーラを出すこと。さっさと歩き 用はなるべく早く済ますこと。こんな経験のせいでしょうか。近頃そんなところを歩くときは 我ながら感じます。目つきが悪くなっている――と。
次回は 何でこの旅をすることになったかを 説明しましょう。
2008 Koka
 
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